思わぬ死角?
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 
 



いきなりで何ですが、
某女学園所属の“三華”と呼ばれし美少女お三方。
玲瓏透徹、すこぶるつきの美貌風貌に、
奥ゆかしき立ち居振る舞いや品格から、
同窓はもとより、大人たちからも人望厚き存在なれど。

  実は…過去で大暴れした侍だったという
  やんちゃな記憶つき転生人で

正義感からか、それとも猛る若さの爆発か、
一体 どういう作用からあふれ出しているものなのか。
いちいち義憤から駆け出していてはキリがないぞという、
一種 老成した考えようも出来るはずだというに、
こちらで紹介しただけでもこの有り様という暴れよう。(笑)

 体術への勘も、殺気への感知力も兼ね備え、
 腕力は及びもつかぬが、
 その分 柔軟さ抜群という女子の身をそれは上手に活用し

チンピラから窃盗団、果ては国際的なテロリスト…の露払い連中までと、
薙ぎ払った顔触れを上げれば あらためておっかない、
結構な武勇伝を重ねておいでの、
お転婆が過ぎるお嬢さんたちの活躍は、だが。
表立ったそれじゃあなく、あくまでも暗躍の部類。
正義のNPOでもなければ、
どっかの商社所属の問題処理係特別班でもないので、
義務があっての活動ではなく、
よって、ルールもなければ 組織化されてる訳でもなし。

 ……こう書くと、
 ホンマにおっかないお嬢さんたちだよねぇ。(う〜ん)

表向きには、
それなりの家の令嬢だけに、
要人が狙われるような場に居合わせる機会も多かろうとか、
彼女ら自身が襲われる危険も一般人よりは多かろうとの解釈の下、
お稽古で身につけていた武道でバレエの跳躍で、
何とか難を逃れましたが、本当に怖かったですぅという
奇遇と演技力の抱き合わせでもって
目立つこともなく過ごせていると思っているらしいものの。
周囲の、特に彼女らの本質を知る保護者の皆様にしてみれば、
騒動の巻き添えになりました、
や〜ん怖〜いなんてな白々しい言い訳も しかと看破しており。

 そのうち、追跡する者が現れて、
 ぐうの音も出ぬような
 追い詰められようをするのではなかろうかと

それが恐ろしいのだと、暇を見ちゃあ言い聞かせてはいるのだが、
そしてそういう理屈はちゃんと判っているからこそ、
ここ最近は、
警察関係者である島田警部補への連絡も
つけるようになっている彼女らなのだが。

 それにしたって、
 彼女らなりの探査という形で動き出してから、
 つまりは、
 後づけ報告という格好なものがまだまだ多い、
 相変わらずの至らぬさなので




 【 今まで ようも見事に
   大人たちを手玉に取ってくれたねぇ。】

どの騒動でやり込めた連中による報復か。
そんな実りのないことをしても、
またぞろお縄になるだけで得るものはないのにねぇと、
ついつい他人事みたいに思えた平八だったが。
ここに五郎兵衛さんがいたなら、
そんなところだけ老成達観していてどうするかと、
あの人のいいお顔を曇らせたに違いなく。

  不景気からの工場閉鎖。
  表向きはそうなっているが、実は盗品売買の本拠地。

そこまでならば、
そういうこともあるかもねと他人事で済ませられたが、

  女学園ゆかりのマリア像を
  強奪しようという計画を訊いてしまって
  ついつい立ち上がってしまった彼女らで。

ネットへとはいえ、
そんな噂を持ち込んだ一年生というのが、
何物かに攫われたと聞き、
追跡がてら、怪しい閉鎖工場へと乗り込めば。

 攫われた少女は倉庫の一角に捕らえられていて、
 また、閉鎖中の管理人だという老婦人が、やはり軟禁されており。

外からの南京錠だけという大雑把な閉じ込めようみたいですね。
贓物の監視にと毎晩見回りに来る担当がいて、
そのおりに、食事を運んでいるらしい。

 『まだ1日2日とはいえ、惨いことをしますよね。』
 『……。(頷、怒)』
 『早急に取りかかりましょう。』
 『では、久蔵殿はお嬢さんをお願い出来ますか?』
 『……。(頷、頷)』
 『アタシはこちらのご婦人を。』

どうか気をつけてお願いします、脱出後は管制室へ、と。
手筈を伝達してから頼もしい二人を見送り、
行き掛けの駄賃、
贓物を収納しているあちこちの戸締まりを解放してやろうと
防犯系やオートメイション系など、
管内ネットワークへの小細工を構えるべく、
制御盤が設置されているのだろう、
一人、管制室へ向かったひなげしさんだが、

 【 教師陣やPTA、
   OGから依頼された警備会社の仕業かと思えば、
   まさか在校生の仕業とはね。】

学園内の事情に通じている辺り、
一番最初の窃盗事件関係者かなぁと思いつつ。
謎の声の主がどこから監視しているのやら、

 “それを突き止めねばだな。”

これが罠なら、
管制盤へと接続したミニパッドはもはや操作も適うまいと見切ると。
左手の中指にはめていた指輪を すりとこすり上げ、
みかん色の髪をこめかみ辺りでまとめていたヘアピンへ手を触れる。

 《 …コンタクト、スタンバイ。》

耳元へ聞こえたGOサインに、電脳小町が頬笑んでいた同じころ。

 「ごめんなさいね、紅ばらのお姉様。」

確かに女学園のセーラー服を着た少女が
倉庫の一角に閉じ込められていたけれど、
実は偽の下級生、なんちゃって女子高生であり。
入った途端に扉が閉ざされてしまい、

 「私もこんなことをしたくはないのです。
  でも、あなた富豪のお嬢様なんですってね。」

誘拐というのを構えるのはさすがに危険も多いし物騒な話。
でも、

 「あなたの身はそのまま無事に返すけれど、
  そんなあなたのお転婆の数々を盾にして、
  口外してほしくないならと持って行けば、
  ご両親も渋々話に乗って下さるのではないかって。」

そうと言う人に頼まれて、おとりをしていただけですのと。
おっとり語る少女を前にし、

 「……。」

おやまあと紅色の双眸を瞬かせる久蔵殿だったりし。

 【 非力で罪のない女の子へは、手を挙げられないのだろう?】

知っているさと上からの物言いをする声は続けて、

 【 もう一人いたよね、確か剣道の心得のあるお嬢さんだ。】

こちらも同じように、軟禁されておいでのご婦人を助けに行ったはずが、

 「とんだ英雄気取りだねぇ、お嬢さん。」

平八が監視カメラをハックして入手した映像では、
びくびくと怯えておいでだったはずが。
煙草をふかしての余裕の佇まいで事務室に座しておいでのご婦人は、
ようよう見れば、

 「…あ、虹雅堂のおばさんじゃないですか。」
 「元、だがね。」

ティアラの一件でケチがついてね、
今のあの店は遠い親戚、実質まるきり他人が経営しているよ、と。
忌々しげに言い放ち、

 「お品のいい女学園のお嬢様がたの中に、
  こんなお転婆もいようとは思わなんだよ。」

だがまあと、紙巻きを灰皿へとにじり消し、
口元を歪めて くくっと笑うと、

 「荒くれが相手ならともかく、
  こんな婆さんを相手に手を挙げやしないよねぇ。」

いいトコのお嬢様には違いないんだ、
年上の、しかも女相手じゃあ、
大人しくしているしかないよねぇと言い切って、

 「一晩帰らないとなりゃあ、お家の人も心配しようがね。
  まま、情報封鎖だ我慢しとくれ。」

お連れさんが大きなホテルのご令嬢だそうじゃないか。
そこからおアシを頂いて、少しは良い目を見させていただく予定なんでねと。
随分と荒んだお顔で、だが、自信ありげに言ってのけるものだから。


 【 どうだね。君らの最大の弱点をつかせてもらったが。】


後日には乱闘もやらかしたそうだが、
そのおりに居合わせた顔触れからデータを取ったからね。
多少の心得があるくらいでは、そう、たとい警棒を振り回そうと、
各々がおいでのお部屋からは出られない。

 【 ましてや、非力な女性相手では、手も上げられないのだろう?
   お育ちの良いお嬢さんたちだものねぇ。】

自分にはそんなこと、いとも容易い行動なのにねぇとでも言いたいか、
愉快愉快という意を含めた笑いようをする。

 【 あと、君自身の武装は静電気を応用した一閃の電撃だそうだが、
   迎えに行く連中はシリコンゴム製の装備をしているから、
   それも無駄になると思うよ?】

こちらを八方塞がりにしたと言いたいか、
そしてそれがよほどに嬉しいものか。
癇に障る笑い方をし始めたが、

 “…何だ、そんな遠くないじゃん。”

よほどの遠隔から話しかけているかと思や、
すぐお隣の事務所からみたいだなと。
まずは平八が、こちらの首謀者らしい声の主の居場所を
ヘアピンをアンテナにしたミニバレッタ型のモバイルで突き止めている。
指先を擦り合わせる組み合わせがマウスやキーボード操作にあたり、
指輪から引き出して手のひら側に添わせた小さな液晶がモニターという、
極小型の一式は、勿論のこと、ひなげしさん特製の規格外品なので。
発信電波も特殊だから、拾いようがないらしく。

 “手下を向かわせるというよな言いようだけど、
  何の、本人が来るだけでしょね。”

そうまでの大掛かりでも無さそだなと、
ついでに、久蔵や七郎次を向かわせた部屋の様子も探って
そっちの様相も把握済み。

  そう、案じるところなぞ一縷もなし、とだ。

例えば、久蔵の方はと言えば、

 「……。」

遊びの少ないシンプルなジャケットに、スリムなデニンズ風のパンツ。
伸縮性のある素材のいで立ちをしたその衣装の袖口から、
ぶんと腕を振り、手元へ特殊警棒をすべり出させると。
いつもの習いで得物を延ばし、棍棒状態にして、

 「な、なにするのかな?」

自分を殴りはしなかろと、判っていても怖いもの。
びくつきながら訊く少女にはもはや構わず、
すっと静かに腕を振り上げると、そのまま……

  どがん・どごん。
  がんごん、どどん・がん。
  ごがん、ばきん、がき・ごんごん、と、

スチール製だという扉を一心不乱に殴打し始める。

 「馬鹿ねぇ、そのくらいじゃあ開かないし壊れないわ。」

呆れたと、おとりの少女が肩をすくめたのも最初のうちの話。

  どがん・どごん。がつごつ、どかどがん。
  がんごん、どどん・がん。
  ごがん、ばきん、がき・ごんごん、ぎん・がぎんどん、と、

全くの全然、怯みないままに延々と、
そんな演奏か何かででもあるかのように、
黙々と扉を叩き続ける金髪痩躯の美少女の図というのは、
一種 鬼気迫るものがあるし、

  どがん・どごん。がつごつ、どかがん。
  がんごん、どどん・がきょん。
  ごがん、ばきん、がき・ごんごん、ぎん・がぎんどん、と、

5分以上も続くと、

 「…うるさい〜〜〜っ。」

それほど広い空間じゃなし、
間近でこうも間断なくガンゴンされれば、
普通の神経の持ち主ならば、ちょっと不快になっても来よう。

  どがん・どごん。がつごつ、どかがん。
  がんごん、どどん・がきょん。
  ごがん、ばきん、がき・ごんごん、……以下省略、と(笑)

更に5分ほど続いたものだから。
耳を塞ぎ、扉から遠い壁際でうずくまってしまったおとりのお嬢さん。
そんな自分の傍らへ、
バキィッと折れた警棒が飛んで来たのへ“ひぃぃっ”と飛び上がり。
しかもしかも、
さっきまで自分が座っていたパイプ椅子をがっしと掴んで、
ぶんっと頭上まで高々と掲げ、
あくまでも扉へ振り上げた久蔵だったのを見て、

 「も、もう勘弁して。
  鍵ならあるから開けるから、
  アタシ付き合えないから。ネ?」

その背中へ取りすがり、
お洋服のポッケから鍵を出して、どうぞと捧げたようであったし。


  はたまた、白百合さんの方では方で


こちらも荒ごとを見越したものか、
ウエストカットのジャケットに綿ニットのトップス、
ボトムは、タイツにミニを重ねた
動きやすいスタイルでおいでだった草野さんチのお嬢様。
剣道のほかに、お茶やお華、
日舞も嗜んでおいでのそれは嫋やかな所作に相応しい、
そりゃあ綺麗な白い手をなさっているが。
そこへとくるりと、手首に巻いていたラバー製のリストバンドをずらすと、
握った指の背へ添わせ直してしまわれて。

 「確かに、
  年上の、しかもご婦人へ手を挙げるなんて無作法は、
  最もやってはいけないという礼儀、学んで来た私ですが。」

まるでボクサーのバンテージのような装備に見える、
それなりの準備を整えたその拳、
もう一方の手のひらへパシンと叩きつけ、締まり具合を確かめると、

 「こんな卑劣な下らぬことへ、
  ほいほいと加担するよなお人まで、
  わざわざ敬う義理はありませんわ。」

切れ長の双眸、やや伏し目がちにし、
胸元へと持ち上げていた両手を祈りのように重ね合わせて、
神妙なお顔で見下ろしたのも束の間。
いきなり、つかつかと歩を進め、
ぶんっとその手を振りかぶると、
高飛車な物言いをしていたおばさんへ、
そのまま思い切りその拳を繰り出して見せて。

 「………ヒッ!」

目にも止まらぬとは正にこのこと。
ひゅんっと風を切って飛んで来た黒い陰へ、
ひゃあっと驚き身をすくめたおばさまの頭上、
拳の下が頭へ触れているかもという至近の僅かに上へ。
どんっと当たったその拳骨は、
かなりの衝撃をすぐ下のおばさまへも伝えたし、
壁材をパラパラと崩しもしていて。

 「あら、目測が狂いましたわねぇ。」

そこまでの拳を繰り出した本人は、痛くもないのか平然としておいで。

 “だってこのリストバンド…vv”

平八特製の特殊ラバー素材で、反発吸収力が半端ない。
実をいや、理屈は今イチ判ってない白百合さんだが、
何かにぶつかれば、
しかも それが壊れるほどの衝撃ならば
ぶつかった側にもかなりの反動が跳ね返るが、
こっち側へはほとんど戻って来ないよう、
分散吸収させる素材なのだとか。

 「今度こそ、間違いなく当てますわよ?」

うふふと嫋やかに微笑うお嬢様なのへ、
こちらのご婦人もまた、
ひぃいいぃっと震え上がったのは言うまでもなかったり。





そんなこんなで、無事に軟禁場所から脱出しおおせたお二人も、
迷うことなく、最初の打ち合わせだった管制室へ駆けつけてしまい、

 【 な、なんでだっ。】

膂力も気性も、データは取ったし万全の仕立てだったはずだのにと、
憤慨する声がうるさい部屋のドア、
電子キー式の施錠だったが、それも難無く開けて二人を導き入れると、
場所をちゃんと探ってあった監視カメラへ
にっこりと笑いかけたひなげしさん、

 「何でも何も、
  私たちがこれまでのいちいちを、
  全力で立ち回っていたとお思いか?」


  ………………………え?


 「装備だって進化してるし、飛んだり跳ねたりも、
  そう、全力の真剣本気であたった事件を
  あなたは知らないでしょうから。」

昔のちょっとした鬼ごっこでの身体能力を物差しにされてもねぇと、
お顔を見合わせて笑ったお嬢様たち。
そんな中の久蔵さんへ、こそこそと耳打ちをした平八で。
ひゅんっと手を振り上げた彼女が繰り出したのは、
逆手に持ち直した警棒での鋭い突き一閃。
壁の一点へドゴンッと叩きつけられた一撃は、500円硬貨ほどの穴を空け、
そこへと平八が、
ポッケから取り出したガシャポンのカプセルを押し付ける。

 「静電気のエレキガンなら、一瞬の衝撃で済みましたが。」

それはおイヤで、ラバーの装備をなさっているなら仕方がない。

 「ちょっと目に染みますがご勘弁。」
 「あ。それってもしかして“痴漢撃退スプレー”の?」
 「はい。中身にと研究中のエキスです。」

宛てがったそのまま、小さな拳でとんと向こうへ押し込めば、
床へ落ちたか、からんという音がして、

  「〜〜〜〜※☆●#っっ!!」

言葉にならぬ悲鳴が聞こえ、
覗きたいけどそれは無理だねと、苦笑しながら揃って退出。

 「勘兵衛様へ連絡しないといけないかなぁ?」
 「う〜ん、まあ一応は。」

このうえ、またぞろお礼参りとかされても剣呑だしねぇと。
言いながらも一向に困って無さそうに笑う平八であり。

 「あ…。」

まだ微妙に陽のある内だったのだが、
それでもということか、
閉鎖中の工場だというに、
その敷地内に入り込んでたベンツが一台。
しかもその傍らには、しょっぱそうなお顔の

 「結婚屋。」
 「お迎えに参りましたよ? ヒサコ様とお友達の皆様。」

何でこうも危険が寄り付く子たちなやらと、
もはや相性の問題かも知れないと呆れつつ、
良親さんが後部ドアを開けて下さって。

 「後始末はどうなさいます?
  勘兵衛様へ連絡しておきましょうか?」

何だったら自分のコネに始末させる手もあるがと、
喉まで出かかりそこは自制。
しっかりしてね、良親様も。

  呑まれちゃ駄目よ、
  ましてや参謀格に就任…とか、しちゃあ駄目駄目よ?(笑)




     〜Fine〜  13.11.25.


  *ちょっと箇条書きっぽくてすいません。
   例えば、彼女らには弱点はないのかと考えてみた結果がこれです。

   ……もはや正義はこの世にはないものかっ。(失礼なっ

ご感想はこちらへvv めーるふぉーむvv

メルフォへのレスもこちらにvv


戻る